クリーンランゲージ
このページでは、クリーンランゲージの主な特徴をご紹介します。
この「世界観」とは、まさに「相手が使う言葉そのもの」を指しています。
クリーンランゲージを創始した心理療法家、デイビッド・グローブは、言葉がその人の世界観、経験、そして記憶を映し出すと考えました。彼は、セラピストの言葉がクライアントの世界に与える影響を最小限に抑える方法を模索し実験し続けたのです。
さらに、グローブはセラピストがクライアントの言葉を自身の解釈で言い換えることで、クライアント自身の深い経験が損なわれてしまう可能性があることにも気づきました。
クリーンランゲージは、クライアントの言葉をそのまま尊重し、その世界をそのまま受け止めるアプローチです。
たとえば「心に小さな棘が刺さる」という表現。これは、一般的には心に引っかかる小さな不満や不快感を示す言葉として使われることがあります。
クリーンランゲージでは、このような言葉を支援者が解釈することはありません。その代わり、クライアントの世界観を尊重し、以下のような質問を投げかけます。
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「その小さな棘が刺さっている心は、どこにありますか?」
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「その小さな棘は、どんな棘ですか?」
この方法は、クライアントが自分自身の内面を探求し、深い洞察や発見を自分自身で得るよう誘います。セラピストは介入せず、クライアント自身のペースで答えを見つける手助けをします。
また、問題を指摘したり、変化を促すこともしません。例えば、「小さな棘を抜くと、どうなりますか?」という問いかけはせず、クライアントが自分のペースで進むことを大切にします。
クライアントの立場に寄り添って考えられたクリーンランゲージのスタンスですが、クリーンランゲージの実践を通じて、支援者自身の世界観や経験、記憶も尊重することができるため、安心してサポートを提供できると感じる経験豊富なコーチやセラピストも多いです。
クリーンランゲージを使用する際に重要なのは、相手の世界観を尊重し、その世界観とクライアントとの間で中立的な立場を保ちながら、無理に変化を促さないことです。これを実現するための方法は非常にシンプルです。
クリーンランゲージで使用する言葉
原則的には、この2種類の言葉のみを使用して、質問を構成します。
この文脈における「前提」とは、「相手の言葉や望むことに対して聞き手側の持つ個人的な前提」を指します。あらゆるアプローチやモデルには、それぞれ固有の前提が存在するのと同様に、クリーンランゲージそのものには、ある特定の前提が存在しています。
デイビッド・グローブが抱いていた前提は、「すべての人には、すでに、自らを癒す力が内在している」という考え方でした。
クリーンランゲージという言語モデルは、ボトム・アップ型のプロセスとして使用される際に、その効果が最大限に発揮されます。このため、クリーンランゲージを実践する際には、「達成すべきゴールや結果」や「この人にとってこれが最適である」といった価値判断や、「こうなることが良い結果である」といった前提は存在しないのです。
そのために、多くのクリーンランゲージを使用するプロセスで最初に使用される質問があります。言い換えるなら、この質問をすることで、クライアント自身にこの後の話のフレームや文脈を選んでもらっているとも言えるかもしれません。
注)フレームワークの中でクリーンランゲージを使用する場合には、他の質問からスタートすることもあります。クリーンランゲージの特徴の一つには、クリーンランゲージ自体にフレームが存在しないため、その他のフレームワークや技法の中で応用しやすいという特徴もあります。
最初の質問
相手の望みを問いかけます。
そして、その答えが、その後の文脈です。
クリーンランゲージを使うアプローチは情報中心ですが、情報そのものの内容に焦点をあててはいません。その情報がどのように組み立てられているか・・・つまり「構造」に注目する方法です。
このアプローチでは、話している内容そのもの(コンテンツ)ではなく、その内容が置かれている背景や文脈(コンテクスト)が重要となります。
人が話す問題や望みの内容は表面的に異なっても、その背後にある構造には共通点があることが多々あります。クリーンランゲージは、内容ではなくその構造に焦点を当て、そこを探究していくことで、クライアントが(もちろん支援者側も)予想もしなかったところにまで影響を与えることがあります。
さらに、クリーンランゲージは「リソース志向」とも言えます。
クライアントが何かを変化させたり、癒していく過程には、クライアントの世界の構造の中にすでに「あるもの」を使っていきます。また、「そこにあるべきなのにないもの」を探します。
その過程で、クライアントはすでに持つリソースをさらに洗練させたり、問題から新しいリソースが生み出されたりすることも頻繁に起こります。
クリーンランゲージが中立的な立場でクライアントの世界に介入しない理由の一つには、クライアントが人生上に持つリソースの全てを支援者は把握できないという現実的な理由もあります。
この場合のリソースの定義
その人の世界に足りない何かを発見したり
必要な何かを手に入れていくために、
すでにあるものを活用します。
クリーンランゲージは、質問を使った傾聴の技法でもあります。その構成は非常にシンプルで、使用するものは、「相手が使用した言葉そのまま」と「クリーンランゲージの質問」のみです。
基本の質問としてよく使用される定型の質問は、8-12個。一般的に経験あるクリーンランゲージのファシリテーターが記憶しているクリーンな質問は約20個前後です。
たくさんあるようにも思えますが、実際使用されているのは、80%以上がその中の4、5つの質問です。
デイビッド・グローブが長い時間をかけて実験したクリーンランゲージの質問は、セマンティック・プライムで構成されています。
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質問に使用される言葉が、それ以上単純化することができない最小単位の言語であること。
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使用するのは普遍性がある言葉であること。
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質問の中に、存在・時間・場所以外のメタファーを含んでいないこと。
これらの条件をもとに絞り込まれた質問です。
現在は、クリーンランゲージの使用用途の広がりにつれ、状況やフレームによって用途限定で使用される「文脈的にクリーンな質問」も存在します。また、クリーンランゲージを応用して生み出された質問も存在します。
クリーンランゲージ
基本の構文
(シンタックス)
・・・には相手が使用した言葉「そのまま」が入ります。
時々により、この構文をアレンジして活用します。
クリーンランゲージは、思考だけでなく、身体や感情との関係性にも焦点を当てます。特に、メタファーを通じて身体が持つ知恵を引き出し、身体的な感覚や心に浮かぶイメージを探究することで、心と身体をつなぐアプローチを取ります。この手法により、クリーンランゲージの質問を通じて身体感覚を深く掘り下げ、新たな洞察を得ることが可能とされています。
さらに、「ランゲージ」という言葉は単に口頭での言語表現にとどまらず、身体の動き、相手が発する微かな音や表情などの非言語的な要素も含まれます。これら非言語表現をそのまま質問の中に取り入れることができる点も、クリーンランゲージの大きな特徴の一つです。
クリーンランゲージ(Clean Language)の開発者、デイビッド・グローブ(David Grove)は、ニュージーランド出身の心理療法士です。彼は、人間の内的な体験や無意識のプロセスに深い関心を持ち、それを探求するための独自のアプローチを構築しました。彼の研究は、彼の生前は、特にトラウマの治療やクライアントが抱える内的な葛藤の解消を目的としたセラピーの分野で広く用いられていました。
メタファーに対する気づき
デイビッドは、心理療法の実践現場で、クライアントが自身の体験を語る際にメタファーを持ちいることが多々あることに注目しました。彼は、これらのメタファーがクライアントの無意識や深層心理で起きていることをそのまま反映していることを見出し、それを効果的に活用する方法を探求しました。その当時の従来のカウンセリングや心理療法では、セラピストがクライアントの話に自分の解釈を持ち込むことが一般的でした。しかし、グローブはセラピストの介入によって「クライアントの世界が汚染される」(デイビッド・グローブの言葉)のを極力排除し、クライアントが自分自身の言葉やイメージを探求することを支援する手法を編み出そうと研究を重ねました。その結果生まれたのが、クリーンランゲージです。
デイビッド・グローブの遺産
2008年に亡くなた後も、彼の思想と手法は、多くの人々によって受け継がれ、発展し続けています。彼が、クリーンランゲージをオープンソースにしたことで誰もが自由にその発想を用いた研究や実験ができるようになっていることも、技法が進化発展を続ける背景には存在するかもしれません。
デイビッド・グローブの遺産は、彼が生涯をかけて追求しの内的体験を尊重し、それを引き出す」アプローチとして、今も多くの人々に影響を与え続けています。