この記事はSymbolic Modelling Emergent Change though Metaphor and Clean Language
by James Lawley and Penny Tompkinsの翻訳です。
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シンボリック・モデリング・ライトはどんな働きをしますか?
シンボリック・モデリングは、アウトカム志向のアプローチです。クライアントが望んでいるアウトカムを生み出し、4つの基本のモデリング・プロセスに焦点をおくことで、変化のためのシンプルなフレームワークを創造することができます。図3は、6つの段階とそれに伴う反復ループを示したものです。
第1段階:セット・アップ(設定)
クリーンなプロセスのセットアップ(設定)そのものが、クリーンである必要があります。
私たちがクライアントに提供したいのは、クライアントの(体の)内側にある知覚世界と、クライアントの(体の)外側にあるセッションが行われる物質界のすり合わせをする機会です。ですから、クライアントが、「自分がいたい場所」と、「ファシリテーターにいてもらいたい場所」を以下のように決定します。
クライアントとファシリテーターが立っている状態で:「そして、あなたはどこにいたいですか?」
クライアントがすでにどこかに自分の位置を定めている場合:「そして、(あなたは)私にどこにいて欲しいですか?」
第2段階:望んでいる/望むアウトカムを明らかにする…「プロブレム – レメディ – アウトカム」モデル( PROモデル)
クライアントがクライアントの望むように座る場所を調整し着席したら、始まりの質問を問いかけます。
「そして、あなたは何が起きれば好いのでしょう?」
この質問に応答する人はいつでも、以下の3つのうちのいずれかを含んだ発言で答えます。
プロブレム(問題)
クライアントが考えついたレメディ(救済/問題回避策)
クライアントが望んでいるアウトカム(結果)
翻訳者付記
クラインアントが望んでいるアウトカムを明らかにできるようクリーンにファシリテーションをするために、私たちは、PROモデル(プロブレム – レメディ – アウトカムモデル)を作りました。
PROモデルには2つのステージがあります。
最初のステージは、クライアントが口にした一語一句から、クライアントの注意が、以下のどれに向いているかを判断します。
プロブレム(問題)…クライアントが好まない現在抱える「困難」
考えついたレメディ(救済/回避策)…「問題」が「無くなる・現れない・避ける・緩和される・解決される」ことを願う「望み」
望んでいるアウトカム…何か新しいものが登場する「望み」
クライアントの回答が、プロブレムか、レメディ(レメディも、問題に言及する*)についてだった場合は、問題点を認識して、後のために書き留めておきます。この場合、第2段階で私たちがすることは、クライアントが、「望んでいるアウトカムへ注意を移行するように誘う質問」での応答です。クライアントがどの程度、問題思考や問題解決に熱心か(コミットしているか/commit)にもよりますが、クライアントが最初の望んでいるアウトカムを定めるまでには、複数回、同じことを繰り返す必要があるかもしれません。
*翻訳者付記
クライアントが、その人が望んでいる結果(アウトカム)についての発言をした場合、彼らの経験の中にあるアウトカム(望んでいる結果)へ、クライアントの注意を保ち続ける質問を問いかけます。図4は、PROモデルの全体像です。
この後のセッション記録(逐語録)は、シンボリック・モデリング・ライトの段階の中で、9つの基本の質問が、どのように「発展・探究・成熟」に使用されているかを示しています。ファシリテーターによって導入されている言葉は、太字で表記して、「質問の構文」と、「クライアントが導入した言葉と、ファシリテーターが導入した言葉の見分け」がしやすいようにしてあります。
F:そして、あなたは何が起きれば好いのでしょう?
C:(私は)水の外にいる魚みたいな気分なんです。 [プロブレム]
F:そして、(あなたが)水の外にいる魚みたいな気分のとき、あなたは何が起きれば好いのでしょう?
C:(私は)息苦しさを解消したいんです。 [レメディ]
F:そして、(あなたは)息苦しさを解消したい。そして、(あなたが)息苦しさを解消すると、それから何が起きますか?
C:(私は)家にいる自分のままでいることができます。 [望んでいるアウトカム]
クライアントは、どのタイミングにおいても、プロブレムを表現し、レメディを考えつき(proposed)、アウトカムを望みます。ですから、私たちの頭の片隅では、PROが継続的に動いています。そうすることで、常に「クライアントが注目しているもの」に、自分たちの注意を向けることができます。また、そこにP・R・Oに関連する質問で応答する準備ができるのです。
第3段階:望んでいるアウトカムのランドスケープを発展/展開させる
クライアントが望んでいるアウトカムを明らかにした後は、その発言/発話を具現化/身体化し、メタファー・ランドスケープで発展させていけるようにクライアントをファシリテーションします。デイビッド・グローブが「言葉を物質化する」と言ったように。
私たちは、以下のように、3つの(クリーンランゲージの)伝統的な発展させる質問を繰り返し問いかけることで、これを行います。
F:そして、あなたが家にいる自分のままのとき、それはどんな家ですか?
C:落ち着きます。
F:そして、落ち着くとき、その落ち着きはどこにありますか?
C:[胸を触りながら]私の胸の中にあります。
F:そして、あなたの胸の中のどのあたり?
C:ちょうど中心に。
F:そして、あなたの胸の中の、ちょうど中心にある落ち着き。そして、[クライアントの胸を指差しながら]そこにある落ち着きについて、他に何かありますか?
C:流れています。
F:そして、それが落ち着いて、流れるとき、その落ち着いて流れるは、何のよう?
C:川みたいです。
メタファーは、相互作用する多くのシンボルから成っています。(この場合は、「魚」、「水」、「家」、「胸」、「川」です)。
クライアントによってシンボルが配置され、その特徴や属性が表現されると、クライアントの知覚空間にシンボルが存在として現れます。これは通常、クライアントがシンボルを指させることを意味します。そして、もし依頼されれば、シンボルを描いたり、それを演じてみたりすることも可能かもしれません。
シンボルが明らかにされ、配置され、描写されていく間に、通常クライアントは、シンボル同士の関係性についても語ります。それらの関係性もまた、同じクリーンな質問を使って発展させることができます。シンボリック・モデリングは、全体的に加算方式です。私たちがファシリテーションする目的は、クライアントが一つの知覚の中に、その人が望んでいる結果(アウトカム)に関連する全てを保持するためだからです。望んでいるアウトカムのランドスケープを発展させるのは、「(何かが)手には入ったみたいだけど」という何かのためではありません。プロセス全体を貫く私たちの意図は、「変化することが自然な反応であるような状況」を促進することです。言い換えるならば、クライアントのセルフ・モデリングは、「クライアント自身がまだ気づいていない道を展開し/発展させていくための準備」です。
第4段階:望んでいるアウトカムのランドスケープの効果を探究する
下地が整うと、クライアントは望んでいる「アウトカムが起きることによる効果(エコロジー/the ecology)」を探究できるようになります。これは下記2つの両方に、クライアントが注意を向けるように誘うことで行われます。
望んでいるアウトカムの発生後に何が起きるか。
望んでいるアウトカムが、「そこまでに描写されていた問題的な状況」をどのように処理するか。(これが、私たちが第2、3段階で、クライアントの言葉をそのまま書き留めた理由です。)
F:そして、あなたの胸の中心にある川が流れていくと、次に何が起きますか?
C:それが自分の運命なんです。
F:そして、それが自分の運命のとき、水の外の魚には何が起きますか?
C:魚は産卵場に行こうとしているんですけど、ジャンプする途中で凍りついてしまっています。
シンボリック・モデリングでは、常に、クライアントが「自分の内的世界の何に驚いているのか」を探っています。私たちは、問題を解決しようとしたり、何かを起こしたりしようとするのではなく、「普通の外側」にあるものにとどまり、そこに注意の焦点を向けます。そして、映画『マトリックス』のネオがしたように、「白うさぎを追いかける」のです。
先程の例の「ジャンプする途中で凍りついてしまった」のように、新しい問題が発生した場合は、どの段階にいても、PROモデルを適用します。そして、改良されたアウトカムのランドスケープを発展させるところに、話を戻します。
F:そして、魚がジャンプする途中で凍りついてしまったとき、その魚は何が起きれば好いのでしょう?
C:私の居場所がある水の中に戻りたい。
F:そして、魚があなたの居場所がある水の中に戻るその直前には何が起きますか?
C:自分自身を信頼します。…いつも信頼に戻ってくるんです。
F:そして、あなたが自分自身を信頼する時、その信頼はどこにありますか?
C:もう一度、胸の中に。
F:そして、信頼とあなたの胸の中心を流れる川に、関係はありますか?
C:はい。その川が流れていると、私は自分を信頼できるんです。
私たちは、「クライアントが自分のパターンに気づく」か「変化が発生する」、この2つのどちらか片方が起きるまで、クライアントが「自分が繰り返しているループの中をぐるぐる回り続ける」ようにファシリテーションします。
(クライアントの発言やメタファー・ランドスケープについての描写の中に)パターンが示唆された場合、私たちはそこまでと同じように続けます。しかし今度は、クライアントのメタファーを使って、パターン全体に取り組みます。そうすれば、クライアントが変化を生み出す時に、ただクライアントが現在抱えている問題が解決されようとしているだけではなくなります。その問題が一例に過ぎない「その問題を含んでいた経験の階層(class)」を解決しようとしていることになるのです。(問題を含んでいた経験の階層を解決しておけば)未来で、クライアントの人生に「別の似たような問題的な状況」が現れた時、彼らは、(今とは違う)新しいやり方でそれを処理することができるでしょう。
F:そして、川があなたの胸の中心を流れているときに、あなたは自分自身を信頼する、そして、あなたは家にいる自分のままでいたい、そして、その魚はあなたの居場所がある水の中に戻りたい、そして、それはあなたの運命。…そうすると 何が起きますか?
C:気づいたんですけど、私はこれまで自分らしさと戦ってきたんだと思います。葛藤を受け入れる必要はありますが、でも、私は水の中にいるはずなんです。それが、上流に向かうただ一つの方法なんです。
F:そして、あなたが水の中にいるはずで、それがあなたが上流に向かうただ一つの方法というとき、水の外にいる魚には何が起きますか?
C:ジャンプをやり遂げます。
クライアントの複数の気づき、そして、「魚がジャンプを<やり遂げる>」(という言葉)から、変化が示唆されています。どのタイミングででも、変化が発生したら即座に第5段階〜変化の成熟〜へと移動します。
第5段階:変化が発生したら変化を成熟させる
図5は、変化の発生以前に使用していた4つのプロセスと同じプロセスを、変化発生後にも使用することを図解しています。ただし、プロセスの使用目的は異なります。
成熟段階での私たちの意図は、「変化が伝染し始め、その伝染が新しいメタファー・ランドスケープを創造し始めるかどうか」、「変化が疑いや懸念、恐れを誘発するかどうか」をクライアントが知る(find out)ことです。問題的な反応が起きても、それは変化が失敗したサインではありません。むしろ、全く逆です。それは、クライアントのシステムがさらなる複雑さを持つことが明らかになり、そのシステムが「現在の現実」(*)を認知したということを示します。
(*)現在の現実
問題的な反応は、ある意味では、症状の緩和や救済以上に、クライアントのシステムが改革される(reorganize)可能性を高めます。むしろ、それが「新しい何かを生み出す変化(a generative change)」なのでしょう。…力強く打たれ強い変化で、それは、もたらされ続けるのです。
成熟は、できるだけ素早く「通り過ぎる」段階というわけでもありません。私たちは、デイビッド・グローブが、「最初の変化が発生した後に何が起きるか」に、セッションの三分の一(の時間)を費やしたのを見てびっくりしました。つまり、第5段階では、第3段階で望んでいるアウトカムのランドスケープが発展し探究されたように、それぞれの変化が(第3段階と)全く同じ質問の使用で成熟されるのです。
F:そして、彼女がジャンプをやり遂げるときに…それから何が起きますか?
C:(私は)続けることができます。
F:そして、あなたが続けるときに、それはどんな続けるですか?
C:自分の肌が気持ちいいです。
F:そして、自分の肌が気持ちいとき、あなたの胸の中心を流れる川には何が起きますか?
C:それが難しい時にでも、自分自身を信頼できます。
F:そして、その魚はそのジャンプをやり遂げる、そして、あなたは自分の肌が気持ちいい、そして、その川は流れる、そして、あなたは自分自身を信頼する。そうすると、何が起きますか? [そして、さらに続く]
成熟のプロセスは、発展していくランドスケープの統合を手助けし、クライアントに「自分が、今、どのように、以前の問題(息苦しい、凍る、自分らしさと戦う)に反応するか」をモデリングする十分な機会を提供します。そして、次に何が起きるかを明らかにしていきます。
第6段階:セット・ダウン
プロセスの完了は、以下のようなことからわかります。
変化が自然な結末を迎えるか、静止状態になる。
新しいランドスケープのロジック(論理)が仕上がってまとまり、首尾一貫している。
新しい問題が浮上しなくなる。また、新しいメタファーが、それまでに存在していた問題的な要素を処理できるようになる。
クライアントが「そして、[クライアントが当初望んでいた結果についての発言]に関わることで、たった今、何か、他に必要なことはありますか?」(*)という質問に対して、クライアントが「ない」と答える。
(*)原文
セッションの残り時間に限りがある場合は、次のセッションまでの間、クライアントがプロセスを継続できるように、メタファー・ランドスケープの絵を描くように勧め、こう言います。
「そして、[重要なメタファーを並べる]について、さらに知ってください。そして、[…]に次に何が起きるかを見つけてきてください。」(*)
(*)原文
セッションを終了するためには、「そして、ここで終わりにしても大丈夫ですか?」(*)というような感じのことを問いかけます。
(*)原文
シンボリック・モデリング使用上の注意
シンボリック・モデリングは、「クライアントが望む結果(アウトカム)と繋がりクリーンでい続ける限りは」、本質的に、ラポールに満ちた、寛容で、力強いものです。そうであっても、私たちは、「シンボリック・モデリングの使用はその人の専門分野の領域内に限定すること」を勧めます。もし、あなたがコーチであれば、コーチングの中で使用してください。つまり、(あなたがコーチなのであれば、)重度の精神障害を患っている人とこれを使用しないでください。
もし、クライアントが(セッション中に)困難に陥ったら、あなたが最初に思い出すべきは、「ほとんどの人々は、問題的なパターンを長い間体験し続けてきた」ということ、そして、「そのパターンは、痛みに満ちているかもしれないが、クライアントはそれとうまくやっていく術を知っている」ということです。
多くのファシリテーターが段階を踏むのを急ぎ過ぎて、クライアントのプロセスを崩壊させています。あなたの最初の応答は、メタファー内に留まるべきで、できる限りやることを少なくしてください。
稀に、クライアントが自然には別の状態(ステート)へ移行しない場合があります。その場合は、クライアントの注意を「リソースのシンボル」、「クライアントが望んでいるアウトカム」、もしくは、「メタの視点」へと誘ってください。
ファシリテーターが「クライアントが<固まる>」と言うのをこれまで頻繁に耳にしてきました。実際のところ、固まっていたのは、(クライアントではなく)ファシリテーターその人でした。クライアントに起きていることと自分の状態とを混同しないようにするのは重要です。「何をしていいかわからない」というときは、(そして、これは起こり得ます。なぜなら、シンボリック・モデリングの全てはボトム・アップ型のモデリング(*)だからです。)次の方向性をクライアントに決めてもらうのがベストな方法です。
(*)
この時、あなたにできることは以下の通りです。
ただ待つ。
「そして、他に何かありますか?」と問いかける。
「そして、今、あなたは何が起きれば好いのでしょう?」と問いかける。
クライアントの望んでいるアウトカムの言葉そのものに戻り、それについて問いかける。
メタファーを描くように、クライアントを誘う。
まとめ
私たちが、シンボリック・モデリングを使って、人々をファシリテーションするようになってから15年が経ちました。しかし私たちは、人々が自分自身を変化させるために見つけ出す予測もできない創造的な方法に、いまだに驚かされています。
私たちのあるクライアントは、「お腹の中に蝶々の群れのような不安を見つけた」のです。それだけではなく、「その中の1匹のある蝶々は羽を広げて、彼女の口から飛び出す必要がある…でも、それができない」ということに気づいたのです。おそらく、あなたにも、その蝶を救う方法いくつかは考えつくかもしれません。けれど、あなたがこのクライアントに作用したものを思いつくことは永遠にないのではないかと思います。…他の蝶々全てが一直線に並んで、「進め」の合図に合わせて、一斉に羽を羽ばたかせて、そのある蝶々が口から飛び出すために必要な上昇気流を作り出す必要があったのです!
クリーンなアプローチは、個々のクライアントのシステムの独自性に適応する変化のための状況を促進します。それらの変化は自己生成されるため、生態学的な変化です。私たちは、このような状況は、魔術の専門家ではなく、邪魔しないことを専門とするファシリテーターによって促進されることに気づいたのです。
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