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シンボル領域のモデリング|翻訳


この記事は、cleanlanguage.com/modelling-in-the-symbolic-domainペニー・トンプキンス&ジェームズ・ローリー著)の翻訳です。

 

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「そして あなたは何が起きてくれたら好いのでしょう?」


これは、私たちが普段、コーチングやセッションの最初に使用するクリーンランゲージの質問です。

「歯茎の炎症が治ってほしいんです」というのが、その時、2022年2月のロシアの侵攻以来、私たちが支援してきたウクライナの心理学者グループのメンバーから返ってきた答えでした。

私たちは医師でも歯科医でもありません。そのため医学的なアドバイスを提供することはできませんが、クライアントと症状との関係に取り組むことはできます。やがて、彼女が、その炎症を自分が置かれている状況に対する反応だと考えていることがわかりました。


そのクライアントは、ウクライナ西部に避難していました。そして、最前線にいる兵士の息子とその母親と一緒に暮らしていました。セッションの2日前、母親に夫の戦死通知が届きました。そして、私たちのクライアントに、息子にそれを知らせるのを手伝ってほしいと頼んだのです。


クライアントは、「自分の国の人々を殺す虐待者全員を自分の歯で引き裂く」ことを望んでいました。クライアントに差し迫った問題は、若い母親が子供に父親の死を知らせるのを手助けできる言葉を見つける方法がわからないことでした。

もちろん、私たちには、そこに協力する言葉をいくらでも提案することができました。ですが、それは私たちのやり方ではありません。私たちが使用するプロセスは、「人は、有効な行動をするために必要なリソースを、すでに、全て持っている」という強固な前提に基づいています。



デイビッド・グローブ


デイビッド・グローブが、最初にクリーンランゲージの発想を思いついてから、40年が経ちました。彼は、トラウマ的な子供時代や自分の記憶に苦しむ大人、PTSDに苦しむ戦争から帰還した退役軍人を助けるための治療法に、クリーンランゲージを適用していました。


彼は、クライアントが自分の経験を説明する際、最悪の瞬間の直前で言葉を止め、「それはまるで…」と言い、メタファーを口にすることに気づきました。当時の一般的な方法は、トラウマの詳細を語ってもらうことでしたが、デイビッドはそうはしませんでした。彼は、クライアントが使用しているメタファーに興味を抱き、トラウマ的な出来事そのものにではなく、メタファーについての質問を問いかけ始めたのです。

彼が天才的だったのは、メタファーが普通の質問をされるのを好まないことに気づいたことでした。デイビッドは、何年もの時間をかけて、個人が持つメタファーに命を吹き込む質問をいくつか見つけました。彼は、時折、自分は助産師だ!と言っていました。

こうやって、クリーンランゲージは誕生したのです。


デイビッドは、自分がクリーンに留まり、自分自身の介入や提案でクライアントの経験を「汚染」しなければ、メタファーは、一人一人に独特な方法で苦しみを癒しながら、有機的に変化することを発見しました。そして2008年、デイビッドは惜しまれながらこの世を去りました。

 

クリーンの応用分野

 

今日、「クリーン」傘下に入っている分野が存在します。クリーンなアプローチが使用されている分野には、コーチング・教育・組織変革・グループファシリテーションなどがあります。おそらく、最速で成長している分野は、研究方法論としてのクリーンです。すでに、クオリティの高い学術誌に論文がいくつか掲載されています。また、Clean Language Interviewing: Principles and Applications for Researchers and Practitionersという著書も出版されています。私たちの元には、毎週のように、クリーンランゲージを使用した学術的なプロジェクト、その他のプロジェクトについての知らせが届きます。クリーンランゲージの応用事例が急増した話は、私たちがデイビッド・グローブをモデリングした1990年代にまで遡ることができます。


 

優秀性のモデリング


1970年代、神経言語プログラミング(N L P)と呼ばれる分野を生み出した優れたセラピストのモデリングが、リチャード・バンドラー、ジョン・グリンダーなどによって行われました。デイビッド・グローブの改革を研究し体系化するために私たちが採用したのは、同じ手法です。1年ほどで体系化できると思っていましたが、その作業にはなんと4年間かかりました!時間がかかった理由の一部は、デイビッドと私たち連絡が取れたのが6ヶ月おきだったこと、そして、その間ごとに彼の手法が進化していたことです。最終的に、私たちが気づいたのは、デイビッドの過去の発明と未来に変化の可能性が高い研究をも含んで、彼がしていることの本質のモデルが必要であることに気づきました。

そして、2000年、私たちのモデリングの成果を、Metaphors in Mind: Transformation through Symbolic Modellingという本として出版しました。


 

シンボリック・モデリング


シンボリック・モデリングは、単にデイビッド・グローブがしていたことを再現したものではありません。認知言語学や、自己組織化理論、進化のダイナミックスなどの最新の発展が含まれています。そうすることで、私たちはこの手法に理論的基盤と幅広い権限を付与しました。


どのようなクリーンランゲージの導入でも、そこで紹介されるのはクリーンランゲージの「基本の」質問、8-12個です。私たちは活動をはじめて30年経ちますが、今でも、私たちの全活動の中核は、それと全く同じ質問で形成されています。それでも、私たちの熟練度は何倍にもなりました。

こんなに数少ない質問で、クライアントが変革を体験できるようにファシリテーションするには、私たち、そして他の人たちはどうすればいいのでしょうか?

これほど明らかに制限されているもので、どのようにしてクライアントが創造的になるのをファシリテーションできるのでしょうか?

どのように、少ないものが多くなるのでしょうか?


クリーンに働きかけるには、クリーンランゲージの質問をただ問いかける以上のことが必要です。


まず最初に、私たちがこの手法をシンボリック・モデリングと名付けた理由ですが…、それがそもそものモデリングの方法論だからです。この手法では、「変化」は技法上のステップでも、プロセスの目的でもありません。シンボリック・モデリングにおける変化は、自発的に発生します。それは、クライアントが個々の唯一の内的世界の構造と組織をセルフ・モデリング(自己体系化)するのをファシリテーションすることによって得られる有機的な副産物なのです。



メタファー


デイビッド・グローブは、人の内的世界や心と体の地図が、根源的、本質的にメタファー的であり、一貫した独自の論理を持っていることを発見しました。1980年代初頭においてこれは革命的な発想でした。…今もまだそうです!日常会話においてすら、人が1分間に6回、普通にメタファーを使用することは、あまり知られていません。

ほとんどの場合、それらのメタファーはメタファーだと認識されていません。メタファーだと簡単に見分けがつくものであっても、非常に風変わりなもののことが多いのです。


ここで、ウクライナのグループとのセッションからいくつかメタファーをご紹介しましょう。


マオリ族の血を引いているためか、デイビッド・グローブはクライアントのメタファーに非常によく反応しました。また、メタファーはクライアントの内的世界を完璧に描写していると受け止めていました。デイビッドは、「クライアントが」自分のシンボル領域に直接関わるのをファシリテーションする方法としてクリーンランゲージを開発しました。このプロセスのことをデイビッドは「トライアログ」と呼びました。


メタファーは、「主観的経験の構造研究」に不可欠だというのは、NLPの初期の定義の一つです。グローブは、個人的なメタファーが、誘導質問にはあまり反応しないことを発見しました。誘導質問とは、「リフレーミングしよう」、「クライアントの体験を変化させよう」とするもの、もしくは、その他の方法で「答えを連想させよう」とするもののことです。意図的であれそうでなかれ、それらの質問は、クライアントの内的世界に、コーチやセラピストの信念や価値観、前提条件をもたらすことになります。


誘導質問と提案をベースにした手法は、とても効果的です。しかしながら、もしもコーチやセラピストが、セッション全体を通してそれらの手法を使用しなければ、特別な何かが起こります。言い換えるなら、「クリーンな言葉(Clean Language)」だけを使用するならば。


シンボリック・モデリングのもう一つの要素は、アウトカム志向です。 デイビッド・グローブは、根っから問題を解決する人であり、ヒーラーでした。彼のことをシャーマンと呼んだ人もいます。私たちが登場するまで、クリーンランゲージを使用して「望む結果(アウトカム)を具体化したもの」を展開させることには、ほとんど注意が払われていませんでした。

アウトカム志向は、NLPの「ウェルフォームド・アウトカム」や「SMARTゴール」以上のものを含んでいます。私たちは、アウトカム志向とは、「セッションをクライアントが望む結果(アウトカム)に継続的に方向づけるプロセス」のことだと理解しています。アウトカム志向は、クライアントの望み、欲求、ニーズ、欲しいものを動的な参照点として利用する方法です。この動的な参照点は、最終的にどこに辿り着くかわからないプロセスにおいて灯台や道標として機能します。


私たちは2つの方法を使ってこの手法に辿り着きました。 「ボトム・アップ」なやり方をしていた熟練セラピストであるデイビッド・グローブ、スティーブ・ド・シェイザー、ロバート・ディルツ、スティーブ・アンドレア、(そして自分達自身)をモデリングしました。そして、ロバート・フリッツの研究をお借りしました。こうして、私たちは、「プロブレムーレメディーアウトカムモデル(PROモデル)」と「ベクトリング」に導かれたのです。


ベクタリングのベクトル(矢印)は、「ある方向へと向かうプロセス」の中において「ある方向へと向かう質問のまとまり」のことです。ベクトルが向かう方向は、クライアントの情報が持つ論理、特にクライアントが望む結果によって決定されます。


クリーンランゲージ、メタファー、モデリング、そしてアウトカム志向という4つの要素は、ファシリテーターが象徴的にモデリングすること、クライアントをクリーンにファシリテーションすることを可能にします。しかしながら、その背後には、訓練されていない観察者にははっきりと見て取れないこともたくさんあり、そちらについては今後の記事で取り上げる予定にしています。



螺旋状の銀河に言葉を見つける


歯茎に炎症があるウクライナ人のクライアントは、今や非常に感情的になりました。彼女は、息子に父親の死を伝える母親を助けるための「言葉をどう見つければいいかわからない」と言いました。この発言は、言葉そのものが問題なのではなく、クライアントが言葉を「どう見つければいいか」がわからないことが問題なのだと示唆しています。逆説的に思えるかもしれませんが、私たちはクライアント(この例のような)メタファーを文字通りに受け止めています。


セッションが進むにつれて、クライアントは、遺族の母子を「支えたいと願う温かく震える愛」の状態へと近づきました。クリーンランゲージの一連の質問を通して、このリソースは彼女の鳩尾に位置する「2つの楕円形の点」というメタファーへと展開されました。やがて2つの点は、自発的に、つながりがある2つの銀河へと変化しました。私たちは以下のように問いかけました。


そして、まるで2つの銀河がつながっているよう、そして、それはあなたの鳩尾にある、そして、その温かさ、そして、支えたいと願う震える愛がそこにある、そのとき(when)、記憶の中の言葉には何が起きますか

少し間をおいてから、彼女はこう答えました。「自分が見つけなければならなかったのは、まるで“銀河系の惑星が一つ一つ…螺旋状になる[ジェスチャーでメタファーを描く]”ように“まとめることができる”言葉なんだ」と。


そうして(And so)、それらの言葉が銀河系の惑星のようにまとまると、それから何が起きますか?

「その言葉は、その子が…(父親との)つながりみたいなものを経験するのを支え」、喪った悲しさもまたあるけれど「喜びや幸せを経験するチャンスを与えます」


クライアントは、その場で言葉を見つける必要はありませんでした。その代わりに、彼女は、「必要とするときに適切な言葉が浮かぶ」というリソースのメタファーを手にいれることができました。


そして、そのセッションの終わりに私たちは問いかけました。


そして あなたの歯茎には何が起きますか

しばらくしてから、「今のところは、ネガティブな感情や感覚はありません」と、クライアントは報告しました。

 

そして最後に…


クリーンランゲージの質問が可能にするのは、クライアントの汚れなき体験をあらわにすることです。最初にクライアント自身に、そして次に、あなたにそれを見せてくれます。技は、「メタファーとは、それが表しているものと一致する組織と構造を持っているもの」だと認識することにあります。


クリーンランゲージの質問が問いかけられ、メタファー・ランドスケープが展開されるにつれて、メタファーが自ら変化するサイコ・アクティブな状態が発生します。そして、そこで起きた変化は、クライアントの経験と振る舞いに、メタファーの変化の構造と同じ形で反映されます。



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