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PROコーチング:COACHING FOR P.R.O's|翻訳|

<学習ポイント>

  • クライアントが注意を向けているものが、「プロブレム(Problrem/問題)」、「期待されるレメディ(proposed Remedy/問題回避策」)、「望んでいるアウトカム(desired Outcome/望み、ゴール、目的など)」の内のどれなのかを、クライアントが発する言葉から見分ける方法。

  • 「望んでいるアウトカム」へとクライアントの注意を誘うため、P、R、Oそれぞれの発言に応答する方法。

  • クライアントが達成を望むことを明らかにする方法。(これがコーチング契約の基本を形成するというのが、私たちの見解です。)

 

<イントロダクション>


私たちは、様々なセラピスト、コーチ、マネージャー、教師やファシリテーターを長年トレーニングしてきました。そして、頻繁に発生するパターンに気がつきました。それは、ファシリテーター達がクライアントの問題に、いとも簡単に惹き込まれてしまうことでした。


クライアントは(セッションによって)催眠状態になるため、彼らが問題に集中するようになるのは驚くことではありませんが、経験を積んだファシリテーターでさえも、無意識にクライアントが抱える問題の底なし沼(ブラックホール)の深みにどんどんはまり込んでいくことに、度々驚かされたのです。


同時に、私たちは、自分たちは、「クライアントの問題を取り扱う」か、「望んでいるアウトカムに注意するようにクライアントを誘う」かの選択をしているようだと気がつきました。


最終的に、私たちは、以下の(a)(b)を明らかにするため、自分たちがしていることをモデル化 (体系化)することにしたのです:


(a)クライアントがプロブレムまたは望んでいるアウトカムに注意を向けているかを、どのように検出してきたか?

(b)クライアントの注意を望んでいるアウトカムにシフト(移行)させ、そこにクライアントの注意を持続させるために、どのようにクライアントをファシリテーションしてきたか?


はっきりさせておくと、私たちは、アウトカムに焦点をあてることが善で、プロブレムに焦点をあてることが悪だと言っているのではありません。私たちは、「ファシリテーターは、どんな時でも、クライアントの注意をどこに誘うか、その選択ができる必要がある」と言っているのです。それは簡単なように思われますが、クライアントとの相互作用に伴うあれこれには、多くのスキルの使用を含みます。


自分たち自身のセルフ・モデリング(自己の体系化)をした結果、私たちは、クライアントが「プロブレム」や「アウトカム」、または両者が混ざったものである「レメディ」について語っていた時に、自分たちの内側で注意喚起の合図があったということに気がつきました。


*レメディ……最初は「ソリューション/解決策」と呼ばれていました。


私たちは数多くのクライアントの発言を検証し、「プロブレムへ注意を向けるように」、「レメディに注意を向けるように」、「望んでいるアウトカムへ注目するように」という内側での合図が生まれるきっかけを言語的な糸口に求めました。


デイビッド・グローブのクリーンランゲージを応用する経験があったため、クライアントの発言そのものに私たちの注意が向いたのは自然な流れでした。


私たちは、クライアントが使用した言葉から関連性がある言葉を選び、個人個人に対してあつらえカスタマイズした質問を作りました。

そこから、クライアントの発言のどの部分に注目すればいいのか、また、(私たちが、クライアントの注意をプロブレムやレメディから望ましいアウトカムに移行するようクライアントを誘うのに使った)どの質問を使えばいいのかを解きほどいていくのは難しくありませんでした。


(関連する質問に挿入する必要があるのはどの部分なのか簡単に識別できるように、この記事の中の例では、色分けしています。)


この記事の中では、このモデルの3つの主な構成要素(認識・選択・利用)を簡単に学べるように、公式的なプロブレム、レメディ、望んでいるアウトカムのモデルをご紹介します。


PROモデルは、変化のための技法ではありません。 それは、クライアントの主観的現実をあなたが体系化するのを手助けし、それによって、クライアントがクライアント自身の知覚を自己体系化(セルフ・モデリング)するのをファシリテーションするための方法です。

基本を理解し、十分な練習をするなら、クライアントと実際にワークする際、PROを使用するプロセスは自然で流れるようになるでしょう。


しかし、PROはそれだけでは完了しません。 これは、「変化のためのフレームワーク」と呼ばれる、より完成されたコーチングプロセスの最初の部分にあたります。 PROは多くの様々な状況で使用できます。

例えば、仕事にPROを応用しているアメリカのある教育コンサルタントは、「PROは自分のミーティングの軌道を保つ能力を向上させ、学校理事達に、問題について考えるところから、学校理事が本当に望むことについてはっきりさせることへのシフトを容易にした」と言っています。



私たちは「私(または私たち)が、本当に望むことは何か?」と問いかけるべきだ。 この文章の響きは非常に簡単に聞こえる。しかしそれには、何が自分にとって重要なことかに簡単に再注目できるよう、あなたの感情や不安を止めるかなりの訓練が必要だ。 Peter Senge, et al Presence: Exploring Profound Change in People, Organizations, and Society, 2005



図1:プロブレム( Problem)、レメディ(Remedy)、望ましいアウトカム(Outcome)

<この記事全体にわたって使用する色分け>


赤=プロブレム  Problem

紫=レメディの「方法」 Remedy

緑=望み 

青=アウトカム Outcome


<背景/バックグラウンド>


クライアントには、プロブレムについて語るのが非常に上手な人がたくさんいます。そして、多くの人が、「問題(プロブレム)の救済策(レメディ)を見つけるのを手伝って欲しい」とコーチに依頼します。しかしその人たちが、自分が望むことを具現化した体験(=望んでいるアウトカム)について知っていることはほとんどありません。


過去10年に渡って、私たちは多くのコーチを指導してきました。そして、気がついたのです。彼らのクライアントが問題に注目する必要がないのと全く同じように、コーチもまた、クライアントが問題に注目するのを手助けする必要はないということに。


問題は、まるで引力のようです。……それは、コーチとクライアントをその軌道に引き入れます。


私たちはまた何人かものコーチたちが、クライアントが問題に対しての救済策(レメディ)を見つけることを手助けすることで満足していることにも気がつきました。


そう複雑ではない問題の場合、救済策はただ必要とされる何かでしょう。例えばあなたのパソコンがクラッシュしたとしたら、おそらく、あなたのストレスを軽減する手助けをしてもらうためにコーチに連絡するより、お客様相談室に電話する方がより効果的でしょう!


しかしながら、今日の経営者達が向き合っている複雑な世界の中では、しばしば、救済策のレメディは短期的な解決に終わり、より大きな構図は無視されています。より大きな構図、そこが、望んでいるアウトカムが出現する場所です。


クライアントのほとんどはアウトカム志向ではない為、コーチングセッション中に、クライアントが、必要なだけ「望んでいるアウトカム」を展開するのを手助けするための時間をたっぷりとるのは重要です。(ボックス1参照)



コーチがアウトカム志向でいるには、一定の注意力(ビジランス)を要求されます。それは、P、R、O間の見分けができることと、首尾一貫してクライアントに望ましいアウトカムに注意するよう誘う質問を問いかけられることです。


しかし、クライアントがプロブレム・レメディ・望ましいアウトカム、に言及しているのをどのように認知するのでしょうか?



<プロブレムの見分け方>


好む好まざるに関わらず、プロブレムは私たちに動機(モチベーション、やる気、刺激)をもたらします。

実際には、プロブレムそのものは動機(モチベーション)ではなく、「不快な感情」や「問題を伴う結果」です。


多数の人にとって、荒んだ暮らしは深刻な問題です。しかし、少数の人にとっては、それは選んだライフスタイルです。 私たちの定義では、プロブレムは、クライアント自身が「それが問題なんだ」と言った場合に限って、プロブレムです。プロブレム(発言)の特徴は以下です。


  • 現在や未来の状況への嫌悪が述べられているか暗示されている。

  • いかなる望みの言葉も含まない。望みの言葉の例:欲しい、必要だ、〜したいなど。


発言がこれら2つの基準を満たしていた場合、それはプロブレムです。(プロブレムは赤字

例:

  • 私は私は電子メールの海で溺れそうだ。

  • このプロジェクトには行う意味がない。

  • 上司が私の話を全く聞かないのが嫌だ。



<レメディの見分け方>


レメディは、望ましくない何かを打ち消したり、取り除いたりする手段です。 注意深く耳を傾けるなら、期待されるレメディのほとんどは、「どのように/いかに」プロブレムが解決されることを期待しているかを(メタファーの状態で)描写しています。


私は人前で話すことへの恐れを「失くしたいです。


私は、人前で話すことへの恐れを「捨てたい」です。


私は、人前で話すことへの恐れに「消えて欲しい」です。


人前で話すことにへの恐れに、私から「離れてもらいたい」です。



しかし、レメディは、問題の状況がレメディが適用された「後」どうなるかについては述べません。言語的に、レメディは、最終結果が欠如しています。……もしくは、最終結果の欠如は、その人にとっては問題ではないのかもしれません。 クライアントが人前で話すことに対する恐れを手放した後、その人には何が残るのでしょう?望んでいるアウトカム(結果)がなくても、彼らは怖がらないでいられるかもしれません。ですが、結局、彼らは退屈するか、ただ退屈して終わる可能性があります。


レメディはプロブレムを取り除きます。しかし、それは、レメディが成功的に適用された場合の行動について方向性を位置づけません。


レメディの特徴は以下です。:

  • まだ起きていない。

  • 問題描写を含む。

  • プロブレムが現れないように、または、プロブレムを取り除くための望み(例:欲しい、必要、〜したいなど)を含む。


レメディ(紫色)は、常にプロブレム(赤色)と関連しています。しかし、変化のための望み(緑色)も同時に、混在します。


例:

  • 私は、あちこちに気を散らすのをやめる必要があります。

  • 私は、同じことを何度も何度も繰り返さないようにしたいです

  • このチームのミス無かったことにしたいです。



<望んでいるアウトカムの見分け方>


望んでいるアウトカムは、クライアントが「望むものを手に入れると世界がどのようになるか」についての描写です。望ましいアウトカムは、問題を解決する方法ではないため、レメディとは異なります。


ミケランジェロがシスティーナ礼拝堂の天井に絵を描くのに着手した時、彼は解決しなくてはならない多くの問題が起きるだろうと知っていました。しかし、ミケランジェロは問題を解決しようとしていたのではありません。……彼は、何かを生み出したいと望んだのです。そして、ミケランジェロが望んだもの、それこそが、望んでいるアウトカムです。


望んでいるアウトカムの特徴は以下です。

  • まだ起きていない。

  • 望み/欲求/希望/願い/願望/要求、欲しい、必要、〜したい、を含む。

  • プロブレムへ言及してない。(「それは問題だ」と推測できることもあるかもしれませんが……)


望ましい(緑色)アウトカム青色の発言であるためには、上記3つの基準を全て満たす必要があります。


例:

  • 私は昇進したい。

  • 私は、難しい決断ができるようになりたいです。

  • 私は、私たちが学習する組織になれたらいいなと願います。


 

<練習問題1>

上記のガイドラインを使って、以下のそれぞれのクライアントの発言はプロブレム、レメディ、望んでいるアウトカムのどれかを見分けましょう。(回答は記事の最後にあります)


  1. 私はみんなでチームとして働きたい。

  2. 私は、上司に、重箱の隅をつつくのをやめて欲しい。

  3. 私は、時間内でレポートを仕上げられない。

  4. 私は、自分がやるべき以上のことをやらなくてはいけないことに疲れています。

  5. 私は、自信に満ちたプレゼンテーターでありたいです。

  6. 私は自分の目標から気を逸らしたくありません。

 

<さて、あなたは何をする?>


ここまでで、あなたは、プロブレム、レメディ、望んでいるアウトカムを区別する言語的な手がかりを見分けられるようになりました。さて、では、クライアントがそれらの種類の言葉を使った時にどのように応答すればいいのでしょうか?


図2は、クライアントの注意を望んでいるアウトカムに導くアプローチの描写です。


図2:プロブレム、レメディ、アウトカムモデル


PROモデルを使うコツは、クライアントが使った言葉をそのまま使うこと、「自分はクライアントの言葉の意味を知っている」と思い込まないこと、そして、要約しないことです。


次にあげる例では、私たちはデイビッド・グローブのクリーンランゲージの質問を使用しますが、あなたが問いかけるかもしれない「同じ目的を達成する」質問は、他にもたくさんあります。


クリーンランゲージの質問の長所は、その質問は「あなたの」言葉を必要最小限しか取り入れないことで、そうすることによって、クライアントの世界の中で、彼ら自身を表現する最大限の自由をクライアントに残すことです。



<プロブレムへの応答の仕方>


クライアントがプロブレムを述べたら、まず最初にそれを認め、その後、彼らを望ましいアウトカムに注意を向けるよう誘います。


「そして、〔クライアントが述べたプロブレムの言葉〕の時、  あなたは何が起きればいいのでしょう?」


例:

クライアント:(私は)期限に間に合わせるように急ぐのはもうたくさんです。


コーチ:そして、あなたが期限に間に合わせるように急ぐのはもうたくさんの時、 あなたは何が起きればいいのでしょう?




<レメディへの応答の仕方>


クライアントがその人のプロブレムに対してレメディを望んだら、まずはレメディを認め、次に、レメディの効果と結果(それはまだ起きてはいないけれど)に注意を向けるよう、クライアントを誘います。これは、クライアントがプロブレムが癒された(レメディが起きた)「後」何を望むかを熟考するように促すためです。


「そして、レメディ発言の一部(*1)すると、何が起きますか?」


または


「そして、レメディ発言の一部(*1)時、それから何が起きますか?」


(*1)ここでは、クライアントのレメディ発言のうち、彼らが望むこと(〜したい、欲しい、必要だなど)を表す言葉を含まない部分を使います。


例)

クライアント:私は事を急ぎすぎるのをやめたい


コーチ:

そして、あなたが事を急ぎすぎるのをやめると、何が起きますか?

または

そして、あなたは事を急ぎすぎるのをやめる時、それから何が起きますか?




<望ましいアウトカム(発言)への応答の仕方>


クライアントが望んでいるアウトカムを発言したら、そのアウトカムの様子を詳細に検証し、さらに情報を生み出すようにクライアントに問いかけます。そして、望んでいるアウトカムをさらに展開するようにクライアントを誘います。


「そして、[アウトカムについての発言の一部(*2)]の時、

その[アウトカムの一部]は どのような/どんな[アウトカムの一部]ですか?」


または


「そして、[アウトカムについての発言の一部(*2)]の時、

その[アウトカムの一部]について 他に何かありますか?」



(*2) ここでは、クライアントの発言のアウトカム部分のみを使います。望む言葉(〜したい、欲しい、必要だなど)を含みません。



例:

クライアント:私はリラックスしたやり方で目標を達成したいです。


コーチ:そして、あなたがリラックスしたやり方で目標を達成する時、そのリラックスしたやり方はどんなやり方ですか?



 

<練習問題2>


PROモデルを使って、練習問題1の6つのクライアントの発言に対して、あなたが問いかけてみたい質問を書き留めましょう。

 

<全てをまとめる>


ボックス3は、クライアントのプロブレム、レメディ、望んでいるアウトカムの認知と応答の仕方についてのまとめです。ボックス4は、クライアントの望んでいるアウトカムを表現するようにクライアントを導くためにPROモデルが繰り返し使われるコーチングセッションの最初の部分です。



注釈:時折、クライアントの発言がPROのどのカテゴリーに属するのかはっきりしない場合があります。その場合、PROモデルを続ける前に、クライアントの発想の方向性を探求する質問をするといいでしょう。(例:「そして、他に何かありますか?」と問いかける)




<まとめ>


最初のうち、プロブレム、レメディ、望んでいるアウトカムの区別をはっきりさせるプロセスが、機械的なプロセスに思えるかもしれません。


しばらくして、あなたの内的な合図が順調に成長した場合には、どんな時でもクライアントが述べている経験の種類を簡単に認知し、クライアントが望んでいるアウトカムへの注意を保ち続けるのをファシリテーションするために、自分がどのように応答すればいいかがわかるようになるでしょう。


クライアントはセッションの序盤にだけPROの発言をするわけではありません。クライアントは、コーチングセッションの最初から最後まで、PROの発言を生み出し続けます。クライアントが語ることに注意深く耳を傾けることで、クライアントがプロブレム、レメディ、望むアウトカムのどれに注意を向けているかが、常にわかるようになるでしょう。そして、クライアントの注意を誘うところが選択できるようになるでしょう。


また、PROはミーティングの軌道を保つため、クリエイティブな状態にグループの状態を保持するため、葛藤を乗り越え共通の結果/目的(アウトカム)に向かって人々を動かすためや、その他多数の生産的な方法に使うことができるでしょう。


謝辞

PROモデルは、ウエンディ・サリバンとフィル・シャロウの協力のもとデザインされたモデルです。

練習問題の答えはこちら

 

著者:Penny Tompkins and James Lawley

 

PROについてより詳しく


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