*この記事は、クリーンな質問を使用した技法の一つ、リスニング・スペースについてです。*
誰かが、身体の上部全体に緊張を感じているとき、たった二つのシンプルな質問がマッサージのように身体を楽にするとしたら、どうでしょう?
クリーンな質問は、その人の経験を探検するのをいざなうのに、簡単で効果が高く、相手を尊重する方法です。それらの問いでは、その人が使ったそ言葉やジェスチャーをそのまま使うのですが、そうすることによって、質問する人の憶測や提案、解釈が入らないようにすることが可能です ーその人が、自身の状況について、好きなように考えて答えられるために、です。
クリーンな質問は、自分自身を表現するために使うメタファーに焦点を合わせることができます。これが起きるとき、彼らは非常に深いレベルで傾聴されていると感じ、劇的な、長期に渡り持続する変化を起こすことが促されます。
リスニング・スペースでは、クリーンな質問と、鍵となる言葉達の繰り返しが、本人の身体の中や周りで、何が起きているかに意識を向けさせるように、使われます(例:彼らの体に『具体的に現れた』経験)。
意志を生じる答えは、しばしば、どこからともなく現れ出るかのようです。
以下に挙げるのは、実際のリスニング・スペースのセッションで、クリーンな質問のうちの、二つだけが必要だったものです。
’X’はどの辺りにある?
’X’について、(他に)何かありますか?
(’X’は、その人が使っている具体的な言葉)
ファシリテーター:何を探ってみたいですか?
探索者(クライアント):私の上半身全部に緊張があるんです。身体がコントロールを保とうとしていて、それが緊張を生んでいます。
ファシリテーター:そして、上半身全体に緊張があります。上半身全体の緊張は、どの辺りですか?
探索者:頭の付け根辺りから、ウエストまで全部です。まるで全体が、大きな鉄の甲冑みたい。
緊張について、異なる種類の気づきが出てきました-- 本人がこの感じを、どのように経験しているのかの、とても視覚的な情報を持つメタファーです。
セッションは続きます:
ファシリテーター:そして、周り全体に大きな鉄の甲冑…
探索者:はい、それは外側にあって、 内側に向かってきつく締め付けています。固く、錆びついた鉄で、容赦ない。
ファシリテーター:で、固い、錆びついた鉄で容赦ない。緊張について、ほかに何かありますか?
探索者:あ! そこに小さな鍵がある!
ファシリテーター:で、小さな鍵…
探索者:そう、私の胸の中の真ん中の、心臓の向こう側に、鍵があります。それはとても小さくて、鍵穴に入ってます。
ファシリテーター:とても小さくて、鍵穴に入っている…
探索者:その鍵が「来て 、私を回して!」と言ってます。私に回して欲しがってます。
ファシリテーター:そして、それはあなたに回して欲しがっている。で、鍵は鍵穴に入っている...
探索者:私は、それに引き寄せられています。
ファシリテーター:そして、胸の真ん中、心臓の前の、鍵穴に、あなたは引き寄せられている。そして小さなカギが、あなたに回して欲しがっている。で、甲冑、で、固い、さび付いた鉄。緊張について、ほかに何かありますか?
探索者:はい、貫通できません、分厚いです。固くて頑丈です。それをこじ開けるには、鍵しか手段がありません。
ファシリテーター:そしてあなたは鍵穴に引き寄せられている。で、小さな鍵は、あなたに回してもらいたがっている。で、甲冑、で、固く頑丈。そして、鍵が唯一の手段...
探索者:鍵を回したい。私は鍵を、回したいです!
ファシリテーター:あなたは鍵を回したい...
探索者:ほんとは、すごく簡単なんです。今、鍵を、時計回りに回しているところです。たった今『ピン』ってなった!。甲冑がさっと開いて、光が差し込んできた。私の上半身の中がみんな液体っぽくなっちゃった。それで、重い金属は地面に落ちました。とても軽くなって、開けた感じ。まさにちょうどいい感じです。
ファシリテーター:そして、とても軽くて、開いている。で、まさにちょうどいい感じ…
探索者:上半身が、光でできているみたい、頑丈で重いというよりは。より強く、柔軟に感じます。今なら、私は動ける。
それはまるで、クリーンな質問が彼女の体に作用して、それまで悩んできたことへの解決法を、引き出したかのようです。
ファシリテーター:そして今、あなたは何を知っていますか?
探索者:その甲冑を動かすのは、自分次第だということです。今なら、開け方が分かります、前はぜんぜ分からなかったけど。
ファシリテーター:そして、それを知っていることは、どんな違いを生みますか?
探索者:緊張しているときや、甲冑があるのを感じるときに、単純に立ち止まり、深呼吸をして、甲冑を外してそれを手放すことが必要なだけ、です。
ファシリテーター:そして、ここはやめてもいいところですか?
探索者:はい。 セッションは、終了間近です。
リスニング・スペースのセッションでは、このような、違う種類の気づきが、頻繁に起こります。本人の選んだ言葉そのままを、クリーンな質問に入れることにより、その人が選んだ言葉の、一層深い意味を探るのを、いざなうからです。それは、非常にマインドフルなプロセスです。
『Words that Touch (触れる言葉)』 という、素晴らしい本の著者であるニック・ポールはその中で、左右の大脳半球をつなぐ手助けをするのがクリーンな質問である、としています。
両側の脳が、私たちがすることのほぼ全てに関係している一方で、それぞれの半球は、非常に異なる思考の質を持ちます。
大多数の人々にとって:
・左半球は『言語的な心』--毎日、言葉で考える、私たちの外の世界とやり取りする時に優位的な認知の心です。他方、
・右半球は『身体の心』--動物が非常に得意である、体感として知っている分かり方で、ヨガやダンスや、瞑想などによってふたたびそれに触れるまで、人々が忘れがちな心です。
リスニング・スペースにおいて、クリーンな質問は、両側の脳の思考をつなぐのを助けます。
まず初めに、探索者は、本人の具体的な経験につながるように誘われます。そして徐々に、言語の心が、身体の心の経験の本質を捉えるために、話を作り出すのです。:緊張の感覚が、甲冑のスーツになります。
それはまるで、クリーンな質問が言語と身体の心との間で、仲介者として振る舞うかのようです。触ることのできない、定義することが非常に難しそうな経験へ、言葉を誘うことによって。
そして、次に何が起きるでしょう?
人々は『自分の体にもっと敏感に』 なる感覚を描きます。
『自分の身体という家に帰る』『答えが横たわっている場所の中に静けさを見つける』というような感覚です。そしてこの場所から、劇的な変化に至る洞察が、生じるでしょう: 甲冑を外すことのできる鍵が見つかるのです。
原題:Asking questions your body can answer( The Listening Space blog :July 24, 2018 )
著者: Tamsin Hartley
原文:https://www.thelisteningspace.co.uk/single-post/2018/07/13/Asking-questions-your-body-can-answer
翻訳: 森本みき Miki Morimoto
Comments